近年、オーガニックの商品は、食品のみならず衣類や化粧品、洗剤など様々な商品が販売され、オーガニックにこだわる人も増えてきました。
もしかしたら、なんとなく体に良さそうだったり、美味しそうだからという曖昧な理由で購入している人もいるかもしれません。
この記事では、なぜオーガニックを選んだのか自信をもって説明できるように、オーガニックのメリットを詳しく解説します。
また、デメリットについても併せて解説します。
この記事を読めば、オーガニックと一般の商品のどちらを買うか迷ったときに、正しい知識をもって選択することができるようになりますので、ぜひ最後までお読みください。
オーガニックのメリット
オーガニック野菜(有機野菜)には有機JASマークがついていて、このマークを付けると「有機」「オーガニック」と名乗ることができます。
有機JAS 認定を受けるには、以下のような様々な厳しい基準があります。
・種付け前2年以上(多年草の場合は収穫前3年以上)、農薬や化学肥料は使用しないこと
・遺伝子組み換えの種苗は使用しないこと
・有害動植物の防除は、農薬に頼らず、他の方法で行うこと
・周辺から使用禁止資材が飛来・流入しないように必要な措置を講じていること
こんなに厳しい条件があるんですね
なんだか体に良さそうだけど・・・
このような厳しい条件のもと栽培された有機野菜には、どんなメリットがあるのでしょうか。
ここからは、以下の主なメリットについて詳しく解説していきます。
- 安全性が高い
- 栄養価が高い
- 野菜本来の旨味がある
- 環境保護につながる
安全性が高い
「オーガニック」と聞いてほとんどの方がイメージする通り、なんといっても安全性が高いことが、最大のメリットでしょう。
有機JAS 規格に定められている通り、農薬や化学肥料、遺伝子組み換え技術も用いられていないため、安心して食べることができます。
しかし全くの無農薬というわけではなく、「農作物に重大な損害が生じる危険が急迫している場合であって、耕種的防除、物理的防除、生物的防除又はこれらを適切に組み合わせた方法のみによっては、ほ場における有害動植物を効果的に防除することができない場合」にのみ、有機JAS 規格で許可された農薬の使用を認められています。
有機JAS規格で使用できる農薬は、天然物由来の一部の農薬です。
例えば、除虫菊乳剤およびピレトリン乳剤(除虫菊から抽出したもので、ピペロニルブトキシドを含まないもの)、マシン油乳剤、硫黄粉剤、硫黄銅・生石灰(ボルドー剤調製用)などや、天敵や微生物を用いた生物農薬、性フェロモン剤などがあります。
一方、慣行農業に使用される農薬は、様々な安全性評価試験や、環境への影響試験が実施され、次の4つの安全性において評価が行われます。
- 農薬の使用者に対する安全性
- 農作物に対する安全性
- 消費者に対する安全性
- 環境に対する安全性
農薬の毒性試験は、ラットで試験を実施して何ら悪影響の出ない無毒性量を求め、その値の100分の1の値を許容一日摂取量として設定しています。
しかし、農薬の使用量を守らなかったり、近隣から農薬が飛散してきて、許容量以上の農薬がまかれてしまうこともあります。
農薬は、出荷するまで野菜に残っているのですか?
野菜の出荷時にはある程度の農薬が落とされますが、完全に消失するまでに時間がかかるため、残留農薬となり、私たちの手元に入ります。
人体に影響のない量とはいえ、体内に蓄積されたり、他の添加物と掛け合わさると人体にどのような影響があるのか懸念されます。
残留農薬の心配のないオーガニックを選んだほうが安心ですよね。
栄養価が高い
農薬に頼らない栽培方法では、微生物がお互いに餌を取り合ったり共存して増殖していき、土壌の栄養バランスを保ってくれます。
この微生物と共生することで、落ち葉や動植物の糞尿や死骸を分解して有機物に変え、それを肥料にして作物が育つという自然のサイクルが維持され、農薬や化学肥料を使わなくても栄養たっぷりの土壌で野菜が育ちます。
また、農薬を使用しないので、野菜自体が病気や害虫から身を守るために「ファイトケミカル」という成分を生成します。
この「ファイトケミカル」は、リコピン、アントシアニン、イソフラボン、ポリフェノールなどの栄養素を含んでいます。
このように、健康的な土壌で育った野菜は、栄養価が高いと言われています。
野菜本来の旨味がある
野菜の栄養価は、微生物の働きにより高くなるということがわかりましたね。
実は、一般の野菜と有機野菜の味の違いも、この微生物の働きによるものなのです。
有機肥料には、カルシウム、マンガン、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅などのミネラルが含まれています。
この有機肥料を土の中に入れると、微生物が有機物を分解し、ミネラル分が豊富な土になり、このミネラル分が、味を濃くしたり野菜本来の旨味となるのです。
環境保護につながる
そもそも有機JAS規格の目的は、以下のようなものです。
有機農産物は、次のいづれかに従い生産することとする。
農業の自然循環機能の維持増進を図るため、化学的に合成された肥料及び農薬の使用を避けることを基本として、土壌の性質に由来する農地の生産力(きのこ類の生産にあたっては農林産物に由来する生産力、スプラウト類の生産にあっては種子に由来する生産力を含む)を発揮させるとともに、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した栽培管理方法を採用したほ場において生産すること。採取場(自生している農産物を採取する場所をいう。以下同じ。)において、採取場の生態系の維持に支障を生じない方法により採取すること。
有機農産物の日本農林規格
つまり、「環境への負荷をできる限り低減した栽培管理方法を採用したほ場において生産すること」や、「採取場の生態系の維持に支障を生じない方法により採取する」とあるように、環境へ配慮した生産方法を採用することによって、野菜の安全性が高まり、体に良い作物を生産することにつながっています。
オーガニックのデメリット
このようにメリットがたくさんあるオーガニックですが、デメリットもあります。
ここからは、以下のようなデメリットについて解説していきます。
- 生産量が少ない
- 入手チャネルが限られている
- 価格が高い
生産量が少ない
慣行農業が発展してきた背景には、戦後の食糧不足の時代に、安定して大量に収穫できるように、農薬や化学肥料を使って栽培する方法が発展してきました。
日本におけるオーガニック市場は世界に比べるとまだまだ小さく、2.3万ヘクタールと、日本の耕地面積の0.5%しかありません。
こんなに良い栽培方法なのに、なぜ広まらないのですか?
①手間とコストがかかる
②見た目が不揃いで廃棄されてしまう
このような理由により、農薬や化学肥料を使うことによってコストや手間があまりかからず、安定的に販売できる慣行農業を選ぶ農家が多いのです。
では、それぞれの理由を解説しましょう。
①手間とコストがかかる
「オーガニック」と名乗るには、「有機JAS規格」の基準をクリアして認定されなくてはなりません。
認定されるには、有機農業の内容を記録し、使用施設の図面を作成したり、毎年格付記録を付けるなど、多くの事務作業が発生します。
また、農薬や化学肥料を使用しないので、土づくりから病虫害との対策などの手間がかかってしまいます。
しかし、このような多大な手間とお金がかかる割には利益率が低く、慣行農業から有機農業へ移行するには生産者は大きな覚悟が必要です。
②見た目が不揃いで廃棄されてしまう
品質的に問題なく、傷もなく味も良い農産物であっても、形の悪いものは食品小売業者の品質規格に適合せず、廃棄処分されてしまいます。
このような見栄え重視の品質管理により、農薬を使って見た目の完璧な美しさを保たなくてはならず、それが安全性を下げる原因となっています。
オーガニックは自然の産物で形は様々なのが普通です。
私たち消費者が見た目重視の考えを改め、形が不揃いの野菜のほうが安全であるという意識をもって購入することが大切です。
入手チャネルが限られている
有機野菜は生産量が少ないので、流通量も限られています。
スーパーマーケットにオーガニック野菜コーナーがあれば手軽に購入できますが、野菜売り場のほんの一部だったり、もしくはオーガニックを取り扱っていないお店もあります。
他に有機野菜を販売しているお店は、自然食品店、地域の直売所や道の駅、宅配会社などがあります。
有機JAS マークがついていなくても、無農薬だったり、化学肥料を使わずに育てたものもあります。
購入するときに大切なことは、信頼できるお店で、見た目が不揃いでもできるだけ新鮮な旬の野菜を選ぶことです。
また、自宅のお庭で自家栽培も良いですね。
価格が高い
有機JAS認定を受けるには、厳しい書類審査や実地検査があり、審査員の旅費や審査費用、有機JASマークのシールの印刷代などの経費が毎年かかります。
また、農薬や化学肥料を使わないので、病害虫、雑草対策が難しく、手作業の時間もかかります。
その分のコストを価格に転嫁しなくてはなりません。
そのため、一般の野菜よりも価格が高くなってしまい、消費者も購入しずらいというデメリットがあります。
まとめ
有機野菜は、安全性、栄養価、味、環境保護において、とても優れていることがおわかりいただけたでしょうか。
しかし、有機JAS認定を受けるには条件が厳しく、費用もかかるため、価格が高くなってしまいます。
ナチュラルな堆肥を使って健全な土を作り、農薬や化学肥料の使用を抑えて有機農産物を育てたり、試行錯誤しながら手間暇をかけて作物を育てている生産者さんがいることがわかりましたね。
わたしたちは価格だけではなく「信頼」を基準に野菜を選ぶようになれば、有機農産物に関する国の制度も、今後変容していき、日本でも諸外国のようにオーガニック市場がもっと発展していくことでしょう。