知らないと怖い・・・残留農薬の危険性とその対策も解説します!

戦後の日本の食糧難の時代に、大量に収穫できて農作業の手間を格段に楽にしてくれる農薬は、日本の食糧増産の大きな役割を担ってきました。

しかし、栽培の天敵となる植物や虫を殺す農薬が、人間にとって好ましいものでしょうか。

かつては農薬に頼り、農作物の大量生産を実現してきましたが、近年では農薬にも規制を設け、環境にも人間にもやさしい、エコロジーな農業を推進する動きがみられるようになりました。

農薬について正しい知識を身につけ、安全・安心な食生活をおくりましょう。

目次

農薬の歴史

人類の農業の歴史は、天候と病害虫との闘いでした。

農薬が使われ始めたのは19世紀に入ってからです。

除虫菊を用いた殺虫剤や、銅や石灰硫黄などの殺菌剤が使用されていました。

当時は農作物の大量生産を可能にし、食糧難から人々を救う、貴重な存在として重宝されていたのです。

戦後しばらくの間は、海外の農薬を使用していましたが、次第に科学技術が進歩し、日本で化学合成農薬を開発し、工場で大規模な生産が行われ、農薬は広く一般に使われるようになりました。

しかし人体への影響が問題視され、1971年に農薬取締法が改正されました。

これにより毒性が強い農薬は姿を消しましたが、生産の効率性を高めるために使い続けた農家もありました。

その状況を打破すべく同年、日本有機農業研究所が設立され、昔ながらの自然な農法が復活の兆しを見せたのです。

農薬のメリット

このように、進歩と規制の歴史を歩んできた農薬ですが、農薬のメリットとはどのようなものでしょうか。

  • 除草、虫よけの手間と時間の軽減
  • 生産性の向上

除草、虫よけの手間と時間の軽減

農薬を使わずに害虫や雑草の駆除をすることは、多大な労力と時間がかかります。

農作物は人間のために特定の形や性質を発達させてきた人為的に作られたものです。

そのため病気にかかりやすく、病気が蔓延しやすいので、作物の生育状況をこまめに確認し、病気や病害虫を発見した場合は素早い対応が必要になります。

病害虫の予防や、蔓延した時の駆除の手間を軽減するのが、農薬の最大のメリットでしょう。

生産性の向上

農薬を使うことによって、病気にかかることが減り、大量の農作物を安定的に供給することが可能になりました。

これは、日本の食糧問題において画期的なことでもありました。

現在スーパーなどで売られている農産物のほとんどに農薬が使われています。

今や農薬はなくてはならないものなのです。

農薬のデメリット

農薬の危険性は様々なことが言われていますが、主に以下の3点です。

  • 長期間体に残る危険性がある
  • 残留農薬の影響
  • 日本は海外よりも農薬の規制が緩い

長期間体に残る可能性がある

農薬の一番の恐ろしさは、一度体内に取り込むと排毒され難いことです。

ウサギに農薬を投与して血液、皮膚、視神経、大脳などの組織に残留する農薬を調べる実験を行ったところ、70日経過しても全ての組織に農薬が残留しているという結果になりました。

一度投与した農薬が70日以上も体内に残留しているとすると、毎日農産物から微量でも農薬を摂取しているとしたら、私たちの体にはどのくらいの量の農薬が残留しているのでしょうか。

残留農薬の影響

農薬の害は、主に神経系統への障害が多く報告されており、その農薬を一生涯毎日摂取しても危険を及ぼさないと見なされる許容1日摂取量(体重1Kg当たり)が農薬残留基準として定められています。

農作物はこの基準値の値内であれば、農薬が残留していても出荷、販売することができます。

いむきち

農産物から検出された農薬の量が、この基準値の値より低ければ、安全なのですよね?

この基準値は、発がん性や催奇形性などの毒性調査に基づいたものであり、頭痛や疲労感、アレルギー反応などに関しては詳しく調査はされていません。

遺伝的にアレルギーになりやすい、なりにくいなどの体質や、生活環境や食事など、様々な要因が関係しているため、基準値以内であれば安全と言い切ることはできません。

農薬は年々新しいものが開発されており、その都度さまざまな検査を実施して、昨年まで使用可能だった農薬が今年は使用禁止になることもあります。

また、海外では禁止されている農薬が日本では許可されていていたり、国によって基準値が違うなど、行政や研究機関が示す基準値を信頼するかどうか疑問が残ります。

ネオニコチノイド系農薬の危険性

危険性が高い有機リン系農薬の代替えとして、1990年代から多用されているネオニコチノイド系農薬は、果物や野菜の栽培に殺虫目的で使用されています。

ネオニコチノイド類は活性物質の総称であり、イミダクロプリド、アセタミプリド、チアクロプリド、ジノテフラン、ニテンピラム、チアメトキサム及びクロチアニジンが含まれます。

家庭で使う殺虫剤や塩アリ駆除、森林や公園の松枯れ防止に使用されており、身近で使われている頻度が高い農薬です。

このネオニコチノイド系農薬には、以下の3つの危険性が指摘されています。

  • 生き物(人間も含む)の神経の正常な働きをかく乱する
  • 水溶性で農作物に吸収されるため洗っても落ちず、残留性が高い
  • 土の中に長期残留する場合がある

ミツバチ大量死事件

1990年代ヨーロッパ各地でミツバチの大量死が相次いで報告されました。

農産物の受粉を助けるミツバチの消滅が、農業に悪影響を及ぼしたことが問題になりました。

また、ネオニコチノイド系農薬が持つ水溶性と残留性の性質は土壌や河川を汚染し、生態系を破壊することも懸念されています。

世界各国と日本の残留基準の違い

フランス政府は2006年にネオニコチノイド系農薬の一部規制を始め、EU諸国、アメリカ、ブラジル、台湾、韓国、中国でも使用禁止の動きが広まっています。

一方日本では、危険性は問題視されることもなく、ネオニコチノイド系農薬の出荷量は年々増加しており、世界各国と比べて、対策は遅れているのが現状です。

少ない量で高い殺虫効果が得られるネオニコチノイド系農薬は、作業効率の向上のために使用量が増え続けているのです。

残留基準値の例

緑茶EU基準の600倍
キャベツアメリカ基準の4倍
いちごEU基準の60倍、アメリカ基準の5倍
いむきち

世界と比べると、日本の農薬に対する規制は緩いんですね・・!
子どもに食べさせるのが不安です。

ポストハーベスト農薬の問題

収穫された農産物は、輸送や移動中に、虫の害や腐敗、カビの発生などにより品質が落ちることを防ぐために、収穫後に農薬を使用することがあります。

このような使い方をポストハーベスト使用といい、収穫後に使用が認められている農薬をポストハーベスト農薬といいます。

海外からの輸入品には、輸入の際に長期の貯蔵や長距離の輸送の必要からポストハーベスト使用が広く認められています。

このため、輸入農産物には日本の農薬取締法、食品衛生法で規制されていない農薬が使用されている可能性があります。

これを防ぐために厚生労働省では、平成18年5月から「基準が設定されていない農薬などが一定量残留する食品の販売などを原則禁止する制度」いわゆる「ポジティブリスト制度」を導入しました。

ポジティブリスト制度とは

一定量以上の農薬等が残留する食品の販売等を禁止する制度のことです。

「残留してはならないものを一覧(ネガティブリスト)にして規制する」という考え方ではなく、「原則残留を認めず、残留してもよいもののみ一覧(ポジティブリスト)にして規制する」という考え方から、ポジティブリスト制度と呼ばれています。

従来の制度では、残留基準の設定されていない農薬等を含む食品については規制がされないでいましたが、本制度の導入により、残留基準が定まっていない場合でも、人の健康を損なう恐れのない量を一律の基準と定め、一律基準を超えて残留する場合は販売等を禁止できることになりました。

いむきち

国も様々な制度を作って、食の安全に取り組んでいるんですね。
自分にもできる、農薬対策はないですか?

それでは、料理をする際に自分でできる農薬の落とし方をご紹介しましょう。

家庭でできる!農薬の落とし方

残留農薬の多い野菜・果物

まずは、どのような農産物に残留農薬が多いのかを見ていきましょう。

1位イチゴ
2位ほうれん草
3位ケール
4位ネクタリン
5位りんご
6位ぶどう
7位
8位さくらんぼ
9位
10位トマト
11位セロリ
12位じゃがいも

このように、1位はイチゴという結果になりました。

イチゴには果実の残留農薬基準値が適用されますが、他の果実と異なり農薬を遮る皮がないので農薬の残留量が多くなると言われています。

イチゴは病害虫に弱いため、病気予防のため20~40回農薬が散布され、収穫前日まで農薬の散布が許可されています。

イチゴに散布される農薬には、排卵障害の原因となる成分「1、2-ジクロロプロパン」を含むDDや、化学兵器禁止法の対象薬剤であるクロルピクリンなどが使用されます。

特にイチゴのヘタと表面のツブツブの種の形状が残留農薬を増加させているとも言われています。

それでは、農薬を落として安心して食べることができる野菜・果物の洗い方をご紹介します。

流水で洗う

基本的には水で30秒間しっかり洗うと、流水の力で野菜表面についている90%以上の残留農薬を洗い流すことができます。

葉物野菜は葉を1枚ずつ流水で洗い、ボウルに水を流しながら5分ほどつけおき、その後振り洗いをします。

レタスやキャベツなどの結球野菜は一番外側の葉に農薬がたくさんついているので、1枚捨ててから流水で洗いましょう。

重曹や酢を使う

重曹水や酢水につけて農薬を落とす方法も簡単なのでおすすめです。

重曹なら水コップ2杯につき重曹小さじ2杯くらい、酢なら水:酢=3:1の割合で混ぜ、野菜を浸けます。

30秒~1分ほどたったら軽く水で洗い流します。

ただし、水に溶けやすい「水溶性ビタミン」や「食物繊維」が溶け出してしまうので、長く水に浸けるのは避けましょう。

酢は殺菌・防腐効果や、病原性大腸菌O-157、腸炎ビブリオ、サルモネラ菌、ボツリヌス菌などに対する抗菌効果もあり、食中毒の予防にも効果的です。

注意点としては、酢に浸けると黄ばんでしまうこともありますので、野菜によっては他の方法を試したほうが良い場合もあります。

農薬を除去する洗剤を使う

様々なメーカーから野菜を洗うための専用の洗剤が販売されています。

もし洗剤が残ったとしても人体には無害で安全であると言われています。

50℃洗いをする

50℃前後(48~52℃)のお湯で洗います。

野菜や果物は表面に傷がつかないようにやさしく洗います。

葉物野菜ならしゃぶしゃぶをするように洗い、洗い終わったらしっかり水気を切ります。

洗う時間の目安

葉物野菜(水菜、レタス、ニラ等)15~20秒
根菜類(いも類、ごぼう、レンコン等)5~6分
根菜以外の固いもの(アスパラガス、ブロッコリー、かぼちゃ等)2~3分
トマト4~5分
果物全般(ぶどう、アボカド、いちご、リンゴ等)2~3分
バナナ5分

注意点としては、43℃以下になると菌が増殖するので、温度管理はしっかりしましょう。

農薬除去以外の効果

50℃前後の温度で野菜を洗うと「ヒートショック」という現象により葉の表面の気孔があいて、細胞が水分を吸収できるので、葉物野菜がみずみずしくシャキッとします。

野菜、果物以外でも、お肉、お魚にも効果があり、雑菌が10分の1に減るので、通常より日持ちします。

野菜に含まれている「アク」も取り除けるので、旨味が数倍アップします。

まとめ

ここまで、農薬の人体や環境への影響について解説しましたが、農薬は危険といわれる理由をおわかりいただけたでしょうか。

しかし、農薬の使用量や使用方法を法規制で厳密に規定することにより、農薬の危険性を弱めることができると思います。

ご家庭でも農薬の危険性を弱める方法があることもおわかりいただけたと思います。

私たちの体は、食べるものでできています。

食の安全に関心を持ち、消費者の意識を変えることで国の制度もこれからどんどん変わっていくことでしょう。

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